宇野亞喜良『万華鏡』 | 柔らかい感性を持ち続けたい

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こんにちは、yukiです。

先日、ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)で行われている宇野亞喜良さんの展覧会に行ってきました。

展覧会は、昨年7月に訪れたガブリエルシャネル展以来。

先日、今年は「感性を育む年にする」と決めたと書いたのですが。

「まずは動かないと始まらない」ということで、今どんな企画があるのかな〜と、会社へ向かう電車の中で検索。

ざーっと出てくる開催中の展覧会一覧の中で、なんとなくポスターに描かれた少女が気になり会場を見たところ、なんと勤務先のすぐ近くで開催されている!

ということで、展示会のことを知ったその日に行ってきました。

久々のギャラリーで感じたこと、宇野さんの作品について思いを馳せたことなどを記録します。

目次

展示会情報

  • 会期 2022年12月9日〜2023年1月31日
  • 会場 ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)
  • 入場料 無料
  • 開館時間 11:00am – 7:00pm
  • 休館日 日曜・祝日・2022年12月28日(水)~2023年1月5日(木)
  • 住所 東京都中央区銀座7-7-2 DNP銀座ビル
  • 電話番号 03-3571-5206
  • アクセス
    ■ 地下鉄/銀座線、日比谷線、丸ノ内線「銀座」駅から 徒歩5分
    ■ JR/「有楽町」「新橋」駅から徒歩10分
  • 公式ホームページ リンク

展覧会の入り口

宇野亞喜良さんとは

1934年名古屋市生まれ。名古屋市立工芸高校図案科卒業。カルピス食品工業、日本デザインセンター、スタジオ・イルフィルを経てフリー。日宣美特選、日宣美会員賞、講談社出版文化賞さしえ賞、サンリオ美術賞、赤い鳥挿絵賞、日本絵本賞、全広連日本宣伝賞山名賞、読売演劇大賞選考委員特別賞等を受賞。1999年紫綬褒章。2010年旭日小綬章受章。
刈谷市美術館、Bunkamuraギャラリー他、個展多数。キュレーターや舞台美術も手がける。

公式ホームページ

展示内容

今年3月、めでたく米寿(88歳)を迎えた宇野亞喜良。イラストレーター、グラフィックデザイナーとして1950年代から半世紀以上にわたり、“黄金の左腕”を武器に、常に時代の第一線で活躍してきた。特に1960年代-70年代は、寺山修司演出の天井桟敷公演をはじめ、アングラ系の劇団を中心としたサブカルチャーと深く結びつき、狂気や毒気、エロティシズム、情念を孕んだポスターやイラストレーション表現で一世を風靡。街に貼られた宇野のポスターが次々と剥がされたり、ポスターが先行して芝居の中身にまで影響を与えるようなことも実際に起こっている。

20世紀末には、これら60年代のポスターが再評価され、宇野の美しさの中にスキャンダラスな妖しさを含んだ耽美的な世界は、いよいよ円熟味を帯びた。なかでも、かわいらしさと妖艶さを併せ持つ少女像は、宇野の同世代から若い世代まで多くの支持を集め現在に至っている。最近になって宇野は、自分と時代の波長が再び合ってきたことを実感。1960年代当時、宇野が感じていた少女特有の可愛らしさに対する感覚が蘇り、自分の感じた少女像を自然に描けるようになったと言う。

「印刷というのはイラストレーションを確実に復元するんじゃなくって、出来上がったものがよければそれが一番いい」と、昔から印刷のマジックに強い関心を示してきた宇野。本展(1階会場)では、俳句と少女をテーマにした作品シリーズ約20点を、津田淳子氏による特殊印刷設計によって、異なる表現方法を試み、新たな作品に蘇らせます。地階会場では、刈谷市美術館のご協力の下、今回の印刷実験による新作の原点となる1960年代のポスター約50点を一堂にご覧いただきます。まさに会場は、最新作と初期作品とのシンクロニシティの場と化します。時代を超え、普遍的な魅力を放ち続ける少女像(万華鏡)をご堪能ください。

公式ホームページ

1. 圧倒的な絵のパワー

今回の展覧会では、それぞれの階で異なるテーマの作品が展示されていました。

  • 1F:俳句と少女をテーマにした作品シリーズ約20点(特殊印刷とかけ合わせて新たに作られたもの)
  • B1F:1960年代のポスター約50点
  • 2F:宇野さんが手がけた映画の上映

1Fで展示されていた作品は、オリジナルの絵に特殊印刷をほどこして、新たな作品を作るという試みからできたもの。

一点一点、異なる印刷技術が用いられていました

  • 金箔をまぶしたような彩りが印刷されたもの
  • 細かいビーズを敷き詰めたようなデザイン
  • 穴を開けたドットで絵柄を表しているもの
  • エンボス加工の凹凸で絵を表現しているもの
  • 和紙を使った作品…など

近づいたり、少し遠くに立ってみたり、斜めの角度から眺めたり、光が反射する場所を探してみたり。

とある作品は、そばに置いてあるミニライトの光を自分で絵に当てて、どんな絵柄が出てくるかを楽しむ仕掛けになっていたり、本の小口にイラストが印刷されたものまでありました。

これほどまでに、珍しい加工がほどこされていると、つい印刷のほうに目が吸い寄せられそうになるけれど。

宇野さんの作品は、オリジナルの絵そのものに強烈なエネルギーがあるので、どんなに特殊な印刷技術にも一切負けることなく、絵と最新技術がかけ合わさることにより、さらに魅力が増していました。

少し角度を変えるだけで違う見方ができたり、時系列をさかのぼってオリジナルの絵を想像するという楽しみ方ができたり。まさに「万華鏡」というタイトルがぴったりの展覧会でした

2. 時代を感じさせない普遍的な魅力

B1Fでは、演劇のポスター、ライブのポスター、化粧品会社や繊維会社の広告など、1960年代に宇野さんが手掛けたあらゆるポスターが展示されていました。

どのポスターからも強烈な個性が感じられ、そのひとつひとつにまったく違った魅力が宿っていて。

ひとつとして同じような作品や似たような作品はないけれど、そのどれを見ても宇野さんらしさに溢れているんですよね。

この魅力にロックオンされた人たちが、次から次へと新たなテーマを依頼し続けたんだろうなぁ…と妄想は膨らみます

その中でも商業的なものについては、依頼をする人や会社から「こうしてほしい!」というオーダーも当然あるわけで。

依頼を受けてから作品が完成するまでのプロセスを想像してみると、たとえば依頼者の世界観や、商品に対して世間が抱いてほしいと依頼主が考えているイメージを聞き、それを一旦宇野さんの中に落とし込んだ上で、その概念やイメージなどをカタチにしていくのかなぁ…とか。

目の前にあるポスターや絵画を見ながら、それが描かれた場面や背景をイメージするのも、アート作品を見るときの楽しみ方のひとつ。

そして本当にすごいと思ったのは、この作品が作られてもう50年以上が経っているのに、目の前にある絵には一切の古さがなく、まったく色褪せない魅力を放っていたこと。

普遍的な引力というか、色気というか、そういうものに自分がぐーっと吸い寄せられているのを感じました。

こんな星の王子さまなんて見たことない…

3. 新たな領域への挑戦

今回、オリジナルの絵に特殊印刷技術をほどこして新たな作品に蘇らせるという試みをされたわけですが、馴染みのない新しい技術を自分の作品に積極的に取り入れるという姿勢から、彼の懐の深さを感じることになりました。

感覚や感性が色褪せない」って、言葉にするのは簡単だけれどとても難しいもの。

年齢を重ねても、過去の栄光を心のより所にするのではなく、現状維持を良しとするのではなく、好奇心の赴くままに軽やかに、新しい挑戦を楽しんでいるんだろうなというのが絵の端々から伝わってきました。

常に新しいものを取り入れたい、自分自身をアップデートしたいという思いを持っていたとしても、年齢を重ねて自分にとって心地よいものが周りに増えていくと、新たなものを迎え入れることはその一部壊すことにもなりかねないと躊躇してしまう気持ちが生まれたりもします。

無意識のうちに、自分にとって身近ではないものを拒絶する心が芽生えている…と感じる瞬間もあったり。

宇野さんのように柔らかい感性を持ち続け、自分自身の変化を楽しみ、新たなものによる刺激を味わい、それによる化学変化もおもしろがる。こんな柔らかな生き方に憧れます。

4. アンニュイな女性に憧れた学生時代

宇野さんの作品に描かれた少女を見ていると、昔、こういう表情を浮かべる女性に憧れたなぁと思い出しました。

小説や物語を読んでいても、わたしが心惹かれるのは決まって、はかなげでどこか影があり、すぐに壊れてしまいそうな繊細さや危うさを持つ一方で、相手の本質をじっと見つめるかのような、静かな眼差しを持つ女性

ミステリアスというのではなく、「アンニュイ」という言葉がぴったりな女性。

この展覧会で飾られた少女たちは、その憂いのある眼差しでわたしを見つめてきて、なんだかよく分からないけれど心がざわざわ。

ずっと長い間、奥深くで眠っていた自分がチラッと顔を出したようで、そんな自分に少し驚きました。

こういう人に憧れるのは、わたしが持つ本質と対極にあるものへの憧れそのものなのかな…とか思ったり。

5. ゆっくり過ぎる時間を楽しむ余裕を持ちたい

2Fで上映されていた映画は、時間がなくすべて観ることはできなかったのですが、とても静かな空間の中で、淡々と映像が流れていました。

人の肌に描かれた絵がこんなにも官能的だとは知らなかったし、効果的に手を動かすだけで物語になり得ると知ったのもはじめてのこと。

こんな風に表現されるアート作品ってこれまで見たことないけれど、世の中にはこういう作品が他にも存在しているのかしら…とぼんやり思ったり。

ゆっくりと水が滴り落ちるのを息をひそめて見守ったり、わずかな動きや映像の端に映ったヒントから、スクリーンに写った身体がどの部位なのかを想像したりしていると、時間の感覚がどんどん薄れ、時間が止まったかのような、どれくらいの時間が経ったのか分からなくなる感覚にもおちいりました。

一歩外に出ると、あらゆるものが効率化、生産性という言葉に支配されていて、とてもスピーディに流れては消えていく世界。

いつも時間に追われる感覚を持っているわたしに足りないものは、ほんの少しずつ変化していく映像を、ただただゆったり眺める心の余裕。このあとの予定や時間のことを考えず、その空間にいることを味わい、目の前にあるものに集中すること。

こういう時間を作っていきたいと改めて感じました。

まとめ

今回は、先日訪れた展覧会、「宇野亞喜良 万華鏡」についてレビューしました。

アート作品を見た感想を言語化してみるというのは初めての試み。

レビューというよりも、この作品たちから感じたことをつらつらと書き綴っただけの文章になりましたが、この展覧会のことを思い出したり振り返る時間もまた、作品の余韻に浸るという意味で心地よいものになりました

この展覧会は1月31日までなので、気になる方はぜひ銀座に足を運んでみられてはいかがでしょうか。

わたしも時間が作れるようなら、お昼休みに2Fの映像をもう一度観に行こうかな〜なんて思っています^^

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この記事を書いた人

2歳、0歳の女児の母。2022年5月よりフルタイムワーママになりましたが、現在は第二子の育休中。風通しよくスッキリと、好きなものに囲まれて心地よく暮らしたい。

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