こんにちは、yukiです。
大好きな作家である吉本ばななさんの本を再読しました。
ばななさんの本は学生の頃から読んでいるけれど、大人になればなるほどその深みを感じたり、共感できたり、理解できることが増えたり、心を揺さぶられることが多くなると感じます。
同じ本でも読むタイミングによって感じることがまったく違うのもおもしろくて、まるでリトマス紙みたいだなぁと思ったり。
今回読んだのはこちらの本。
この本は、以前読んだことがあったけれど、あまり内容を覚えていなくて。
なんだかいいことがたくさん書いてあったような気がする…とふと思い出し、改めて読み直すことに。
この本を書かれたとき、ばななさんのお子さんはすでに大きくなっていたけれど、お子さんが小さな頃を振り返って街と子育ての思い出を書かれていたりもして、おそらく数年前に読んだときより、子育てをしている今の自分に響く部分が大きかったような気がします。
下北沢は何度か下りたことしかなく、住んだことはないけれど、下北沢という街を知らなくても十分に楽しめる本。
今の自分に響いた箇所を3点ピックアップしてご紹介します
本の概要
著者
吉本ばなな
1964年東京都生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。87年小説「キッチン」で第6回海燕新人文学賞を受賞しデビュー。89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第39回芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で第2回山本周五郎賞、95年『アムリタ』で第5回紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』で第10回ドゥマゴ文学賞を受賞。著作は30か国以上で翻訳出版されており、イタリアで、1993年スカンノ賞、96年フェンディッシメ文学賞、99年マスケラダルジェント賞、2011年カプリ賞を受賞。近著に『サーカスナイト』『イヤシノウタ』など。noteにてメルマガ『どくだみちゃんとふしばな』を配信中。
下北沢について(Amazon)
出版
- 出版社:幻冬舎
- 発売日:2016/9/23
内容
あなたがたった一人のヒーローになるためには?
試練の時にこそ心に効く、19の癒しの薬。
高校受験の帰り道、父と歩いた下北沢の商店街。歩くのが速い父が、少しゆっくりペースを落として楽しそうに街を散策していたーー。思い出の地に住むことになった著者が、下北沢で出会った人やお店を通して見つけた、幸せな生き方とは。試練の時にこそ効く、19の癒しのエッセイ。「選べなかったほうの人生を夢見ることはできない。でも、選べなかった人生が私に微笑みかけてくれるとき、いつでもその人生に恥じないようにあることはできるかもしれない。」(本文より)
下北沢について(Amazon)
1. 「濃くて美しい塊」を手に入れるために
とことん相手に合わせてみたり、ゆずってみたり、無為な時間と思われる時間を過ごしてみることでしか、思い出の塊はできないように思う。
今、あの日々を思い出すとあまりにも濃くて美しい塊になっているから、びっくりする。私が私の好きなことだけをどんなにがんばって追いかけていても、多分こんな塊にはならないだろうと思う。そしてその塊があるからこそ、今、まだ自分の人生に残されている自分のことをする時間がこんなにもありがたく嬉しいのだろう。
下北沢について(Amazon)
息子さんが幼い頃、一緒に過ごした時間を振り返り、「あまりにも濃くて美しい塊」と言えるのは、ばななさんが乳幼児と過ごす時間から逃げることなく、ありったけのエネルギーを使って向き合ってきた結果そのもの。
それほどまでに、ある意味尽くした時間があったからこそ、息子さんが大きくなり、徐々に手が離れる年齢になったとき、その塊をたまには懐かしく思い出しながら、自分自身に戻ってきた時間を大切に使えるのではないかなと思います。
「思い出の塊」という言葉を選ぶところが、わたしがばななさんを好きな理由なんだよなぁと改めて感じた部分。
そして、高齢出産で、子どもに付き合う体力がないのはわたしも同じ。
2. 気持ちが冴え渡る場所に行きたい
あんなにうるさい商店街の真ん中で、特にすごく広いスペースでもないのに、私の心はゆっくりものを捉えられた。ゆっくり考えること、考えに確かに句読点を打つこと、それはきっと心にとって栄養のようなものに違いない。
下北沢について(Amazon)
騒がしい場所なのに、なぜか静かな気分になれるところってたまにありますよね。
この文章を読んでふと思い出したのは、昔訪れたアジアの国々でのこと。
雑然としていて、人が会話する大きな声や車などが行き交う音で騒がしいはずなのに、自分のまわりだけ「しん」としているというか、自分だけが薄い膜に覆われているようで、とても静かな空間にいるような気持ちになったことを思い出します。
そこにいると、まわりの環境や自分自身の考えをとてもクリアに感じることができて、自分の感性がいつもとは比べものにならいくらい敏感になっていることを感じるんですよね。
全く理解できない言語の中にいると、こういうことってまぁまぁ起きるけれど、日本では本当に静かな場所や落ち着くカフェ、自然の中などでしか、こういう感覚になることってない気がします。
ぐっと視界が広がり、頭が冴えるあの感じ、久々に味わいたいなぁと懐かしく思い出しました。子どもがいてしばらく海外が難しいのであれば、自然のある場所へ行くのが手っ取り早いかもしれません。
3. 自分の体を使うことでしか得られないもの
インターネットがなんでも教えてくれる時代だからこそ、自分を奮い立たせるような情報は、こうやって自分がひとつひとつ体で運命を操りながら集めていかなくてはいけないのだと、私は一瞬にして学んだ。
下北沢について(Amazon)
良くも悪くもあらゆる情報に溢れていて、頭を休める時間なんてほとんどないと思えてしまうこの時代。
だからこそ、自分の体を通して得る経験がさらに貴重なものになるなぁと感じています。
「効率的」だとか「生産性」みたいな概念から離れて、自分の体を使うことでしか得られないことはきっととても多い。
これは、自分が育児をするようになり、新たに自分の中に生まれた価値観だなと感じます。
大人だけに囲まれているときも、心の痛みや疲れを感じたり、感動したり、心が揺さぶられるような経験をすることがなかったわけではないけれど、子どもが生まれてからの方が圧倒的に、頭で何かを考えるより、自分の体を使って知らなかったことに気づく、体を使った経験の積み重ねで新しい価値観を得るような場面が多い気がしているんですよね。
たとえそれが、自分にとっては相当ツラく、試練のような経験だったとしても、その経験を経て得るものは多いはず。
そんなことに改めて気付かされた一文でした。
まとめ
今回は、吉本ばななさんの「下北沢について(Amazon)」を読んで感じたことをまとめてみました。
下北沢という街の紹介本ではもちろんなく、そこに住むことを通してばななさんが感じたことを綴られた本。
いつもながら優しい気持ちになれて、新たな視点を発見させてくれるばななさんらしいエッセイだなぁと感じました。
このレビューが、どなたかのご参考になれば嬉しいです^^
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